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日本の農業はオランダより劣ってる?


暇なので、久しぶりに農業について。

(今週の恥ずかしいおじさんは前の記事にあります)


日本の農業について、
「オランダより劣っている」と言う記事をよく見かけます。
果たして日本の農業はオランダより劣っているのでしょうか?

はい、劣っています(笑)

という身もふたも無い答えですみません(笑)


ただ、こういう文章を書く人は
往々にして数字だけを見て書いているので、
気象や地理などの様々な環境の違いを考えないか、
あるいは無視しているので、
ちょっとだけ日本の農業を弁護します。


この手の文章で必ずあるのが
「オランダのトマトは日本の何倍もの収量がある」
(単位面積あたり)
です。

おじさんも若い頃、
オランダでは10アールあたり20トン以上取るという話を聞いて
「ひえ~、すごい」と思いました。
日本ではせいぜい8~10トン程度です。

ただ、よく考えてみるとオランダとは気象条件が違います。

日本の夏は暑くて作りにくいばかりか、
湿度も高くて病害虫がつきやすく、
1作のうちに夏を超えるのは手間がかかります。
その点、オランダは日本より夏が暑くないので楽です。

日本でもオランダ並みの収量を得ることは可能で、
実際、つくば万博では
「1本の木から1万個のトマト」が展示されましたし、
それ以前に、
露地+プランター+日当たりが悪いという
3重苦のおじさんの庭でも
おととしはミニトマトを16段目まで取りました。
(トマト農家は8~12段くらいだと思います)

日本の篤農家なら、オランダ並みとまではいけませんが
(今はで40トン以上取ってるらしい。ひえ~)
20トン程度なら取ることは可能だと思います。
ただし、金と手間をかければ、です。

「じゃあ、おじさんが作れば?」と言われると
全力で断ります(笑)

日本で作るなら、
年1作で20トン取るよりも、
年2作で10トンずつ取る方が
遙かに楽で、手間もいりません。
1本の木から多く取ると栽培期間も長くなり
その分病気にかかりやすくもなりますし。

あと、オランダで見られる6m以上もあるハウス、
日本には台風が来るので作れません。
そりゃ、風速30mに耐えられるハウスくらい
作れますけど、コストがね。

加えて、日本海側だと積雪の問題もあるので
オランダのような連棟ハウスは作りにくいです。
棟と棟の間の谷の所に雪がたまって
ハウスがつぶれてしまうからです。
まあ、以前鳥取県で連棟ハウスを見たことがあるので、
消雪装置をつければ出来なくはないでしょうが。

連棟ハウス
    日本のですが連棟ハウス。オランダのはもっと背が高い。
    谷の所に雪がたまるとハウスがつぶれる。


「オランダみたいに輸出を増やせ」
と言うのも良くある主張です。

これも流通面で、
オランダでは陸運で周辺国に輸出できますが、
日本が輸出するとなったらコストの高い
空運しか無いので、
かなり不利な事も知っておいて欲しいです。
船便で運べるような農産物は
そもそもアメリカやオーストラリア等に負けます。



余談ですが、
「島耕作の農業論」(弘兼憲史 光文社新書)の中で
大分県の植物工場が紹介されています。
そこではトマト1.36ヘクタールが栽培されていますが、
弘兼さん、
「この広い工場を社員一人、パート十五人という少ない人数で運営されている
ことも特筆すべき事だろう。」と驚いています。
(本文59ページ、原文では一五人と書かれています)

え?
これって20アールに換算すると2.35人。
夫婦+パート一人でこれくらい作っているトマト農家なんて
珍しくも何ともありません(笑)

ちなみにこの本、
島耕作は相変わらずとんちんかんですが、
(たとえば炭酸ガス施肥に驚いていますが、
 日本でもとっくにやっています)
第一章と第七章の対談は
まともな人が相手なので読む価値はあります。


余談の余談ですが、
今年読んで良かった一般向け農業書
「日本は世界5位の農業大国 大嘘だらけの食糧自給率」
(浅川芳裕 講談社X新書)

この手の本にありがちな
「おおげさ・紛らわしい」はありますが
本筋は正しいと思います。

書店で平積みされていたで買いました。
読んでて、「あれ、数字が古いなあ。」と
思いましたが、
よく読むと2010年発行と
ちゃんと帯に書いてあります。
おじさんの目は節穴です(笑)


今日はまじめな話なので、
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農家と税務調査

また農業について書いてみました。
まじめな記事なので、興味のない方は
すっ飛ばして、
今週の恥ずかしいおじさんをご覧ください。


昨日11月14日の毎日新聞夕刊1面トップに
「コメ農家9.6億円申告漏れ 直売増え所得つかめず」
と言う記事が載っていました。

これを読んで、働いていた時に聞いた
税務調査のちょっと酷いことを思い出しました。

その前に、
「税務調査が入ると国税は必ずお土産(追徴金)を持って帰る。」と
ちまたでは言いますが、これは全くのデマです。
実際、父が自営業をしていたので、
何度か税務調査が入りましたが、
一度も追徴金を取られたことがありません。


これを前提に、
税務調査で持って行かれた非道いお土産について。

ほとんどの農家は自分で食べるために
家庭菜園で野菜などを作っています。

なんと、国税は
この野菜の価値を小売価格で評価して
所得として課税していました。


農家にしてみれば、
家庭菜園の野菜は生産コストのみの
ほぼタダという意識なので
必ず追徴金を取られていました。

当然小売価格にはスーパーのコストや利益が
含まれています。
おじさんの古い感覚ですが、
スーパーでついている価格は
卸売市場価格の1.5~2倍くらいです。

卸売価格自体もそれが適性であるとは
限りませんが、
市場出荷すれば当然出荷コストもかかります。

これもおじさんの古い感覚ですが、
スーパーの価格の1/3~1/4くらいが
製造原価だと思います。
(人件費を除く)

つまり、家庭菜園で取れた野菜を
所得の申告漏れとして追徴課税された所得のうち、
2/3~3/4は
(農家にしてみればほとんどゼロの)
存在していない所得について課税されたことになります。
金額的にはしれていますが、これはちょっと非道いなあ。

おじさんとつきあいのある農家に税務調査が入ったのは
2件だけですが、2件ともこれを取られていました。
また同僚に聞くと、たいてい取られると言うことです。

昔の話なので、今は違うかもしれませんが、
たぶん今もそうだと思います。
農産物直売所が普及したので
評価額はもう少し安くなっているとは思いますが。


まあ、農家の税金については
クロヨンだの、トーゴーサンなどと言われており、
特に昔はざるだったのも事実です。
今でも隠そうと思えば隠せます。

昔の白色申告では(今は改正されています)
生産原価が「国定」でした。
しかも実際より高めの。

つまり、生産コストを下げれば
「国定原価」との差額分が
「非課税所得」になっていました。
たぶんこの為に昔の稲作専業農家は
規模が大きくても白色申告していた人が多かったと思います。
これはこれで何だかなあと思います。

多くの農家に減価償却という概念が薄いのも
ひょっとしたらこの制度のためだったのかもしれません。


おまけ

税務調査で追徴金を取られた農家と話していたこと。
この件は明らかに所得隠しをしていたようなのですが、
この農家、その分をへそくりにしていたようで、
頼むから嫁はんには言わんとってくれ」と
言っていました(笑)


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食糧自給率について

暇なので、食糧自給率について計算してみました。
今回はまじめな話です。

9月18日発売のモーニング42号を読んで
「また島耕作がとんちんかんなことを言ってるなあ」と
思っていました。

sima2.jpg
弘兼憲史 「会長 島耕作」 講談社「モーニング42号」157ページより


でも、調べてみると
「生産額ベースで考えるべきだ」という意見も
多いようなので、
純粋にカロリーベースでどれだけ自給できるかを
計算してみました。

なお、算出根拠は「続きを読む」に書いておきます。
端数はラウンドのため、一致しないことがあります。
↑↑ わあ、こういう書き方、公務員的で嫌だなあ(笑)


2010年農業センサスによると
日本の経営耕地面積は363万ヘクタール
水田面積は205万ヘクタールです。

水田面積は転作面積も含むので、
転作を止めて全ての田んぼで米を作ったとすると
米の可能生産量は約1100万トン

カロリーに置き換えると
42.0兆キロカロリーです。

残りの耕地に
(条件が不利な牧草地などを含みます)
全て大豆を作ったとして、
大豆の生産量は317万トン。
カロリーでは13.3兆キロカロリーです。

合わせて、553.1兆キロカロリー。


一方、日本の人口は1.27億人。
1人当たりの必要カロリーを
1日2300キロカロリーとすると、
1年当たりの全人口の必要カロリーは
106.6兆キロカロリー。

よって、カロリーベースで
農作物だけの可能自給率は51.9%


これは、毎日米と味噌汁と納豆だけ食べて、
足らずを魚を食べて補っても飢え死にする人が出る
と言う数字ではないでしょうか。

つまり、肉を食うなんてとんでもない。
卵はごちそうという、
江戸時代の生活にもどっても常にひもじいという
生活を毎日行うことになります。
悲惨だなあ(笑)


まあ、2010年センサスから統計の取り方が変わって、
自給的農家や耕作放棄地は
上の数字に含まれていないので、
実際は、もう少しましな数字になるとは思います。


「続きを読む」で算出根拠を書いています。

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